おうちゴハン

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高齢者は小食でよい。高齢者は塩分少なめで薄味がよい。栄養バランスを考えて野菜中心の食事が良い。そんな風に思っていませんか。
高齢者は筋肉や体の水分が減少し、体力や免疫力も低下します。少ない食事量や偏った食事では低栄養状態になります。低栄養だと病気や骨折のリスクが高くなり、認知機能の低下や寝たきりになる可能性も高くなってしまいます。食事量が減ると食事由来の水分も減るので脱水を起こしやすくなる場合もあります。ここでは「食べる」をテーマにお伝えします。

低栄養になっていませんか?

低栄養とは

健康な体を維持するために必要なエネルギーやタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが不足した状態を「低栄養」といいます。低栄養によって、認知機能の低下、気力体力の低下、免疫力の低下、筋肉量の低下、骨量減少などが起こり、病気にかかりやすくなったり骨折しやすくなったりします。高齢者は食欲減退したり食べる機能が低下したりするので低栄養になりやすいのです。食欲減退の中には、買い物や調理が面倒でなる場合もありますし、入れ歯が合わない、噛む力が衰えたなど食べることが大変になる場合もあります。また、食べているつもりでも、消化機能が落ちて栄養や水分を身体が十分に摂れなくなることもあります。

低栄養のチェック

家で簡単に確認できるのが体重の変化です。半年で体重が3%減少すると要注意です。体格にもよりますが、目安として半年で3㎏減少したらかかりつけ医に相談しましょう。
BMI18.5未満は低栄養のサインです。BMI=体重(㎏)÷身長(m)×身長(m)で計算できます。
血液検査の結果、血清アルブミン3.5g/dl未満、血中コレステロール150mg/dl未満も要注意です。

こんな方は特に注意

病気や手術のあとや、酸素療法などをしている方
病後や術後は体力が落ちていて普段以上に必要な栄養素があります。酸素療法をしている方もエネルギー補充が大切な状態です。ですが、こういう方のほとんどが体力と食欲の低下を起こします。一人暮らしだと買い物や調理が大変なので「簡単なもの」で済ませてしまい改善が難しい場合があります。
糖尿病や腎臓病で食事療法を頑張っている方
真面目に食事制限をしてきた方ほど「食べ過ぎはダメ。アレもコレも食べてはいけない」と思う傾向があります。病気のコントロールには大切な食事療法ですが、低栄養ではいけません。
独居や高齢者だけの暮らし
一人だと億劫になるのが料理です。高齢者二人でも同じです。以前に比べて食事に対する意欲がないと「いつも同じもの」になりやすく栄養は偏りがちです。ご飯をたくさん食べても肉や魚を食べなければタンパク質が不足しますし、野菜も食べなくてはビタミン・ミネラルが補給されず低栄養になります。
食べる機能が落ちた方
入れ歯が合わない、または病気やケガが原因で咀嚼の機能が落ちると、食事量が減り低栄養になりやすいです。嚥下(飲み込むこと)の機能低下はむせや誤嚥に繋がり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。この場合は食べる時の見守りと食事の形態を見直さなくてはいけません。
うつや認知症の方
高齢者うつや認知症になると食欲が落ちる方がいます。本人の力で食事量を上げることは難しいです。
そのほか
風邪や下痢で体内の水分やミネラルを消費したあと。薬の副作用で食欲がわかない。病気によって体調不良で食事量が減ったなどなど。

親の様子をチェックしましょう

食べる様子の変化は低栄養に繋がります。

食事量が減った。食事時間が長くなった。食べこぼしが増えた。食事のあとガラガラ声になる(誤嚥の可能性大)。食事中によくむせている。口の中に食べ物が残っている。

低栄養と脱水症状で起こる主な様子ですので体重減少と合わせて注意してください。

よろけやすい。ダルそうでボーっとしがち。皮膚の乾燥や炎症が増えた。傷が治りにくい。抜け毛が多い。風邪にかかりやすい。足のむくみ。唇がカサカサしている。口の中がベタベタまたは乾いている。オシッコが少ない。便秘がち。

高齢者に必要な栄養

まず必要なのはエネルギーです。全体の食事量低下や著しい体重減少の場合はとにかくエネルギーを確保してください。食べやすいものや好きなものから始めましょう。スーパーや薬局で高齢者向けの高栄養のドリンクが売られていますし、オヤツでも構いません。次に、血液や筋肉を維持するのに必要なタンパク質の確保です。肉や魚はタンパク質の補給に不可欠ですので、毎日食べることをお勧めします。ビタミンやミネラももちろん重要ですが、エネルギーとタンパク質があってこそ威力を発揮する栄養素です。

主な食材と栄養素

卵や乳製品
タンパク質、カルシウム、鉄などが含まれます。
肉や魚、豆腐や納豆などの豆類
タンパク質、ビタミン、鉄、カルシウムなど。
野菜や果物
ビタミン、ミネラル、食物繊維など。
ご飯やパンなどの穀類、芋類、砂糖や油脂、お菓子など
糖質、脂質、食物繊維など。これらは大切なエネルギー源です。

ご覧のように一つの食材に一つの栄養素が入っているわけではありません。色々な食材を食べることでバランスの取れた栄養を摂ることが出来ます。

嗜好の変化に合わせてあげよう

高齢になると味覚が落ちると言われていますが、必ずしも加齢による老化だけが原因ではありません。低栄養によって味覚障害を起こすことがありますし、病気や薬の作用による場合もあります。
「食べる」ことは五感を使って楽しむものです。匂いを感じにくくなれば食べたい気持ちが起こりませんし、入れ歯のせいで固いものが食べられない、微妙な味付けを楽しめないということもあります。

食事量が低下した時には原因を考えてみよう

私が知っている方々は「ハッキリした味付け」を好むようになった気がします。食事量が低下した時に薄味のおかずではなく、しっかりした味付けにするとご飯量が増えることがありました。塩分量を気にしすぎて、食事量が減少、低栄養になるのでは本末転倒です。また、若い時にグラタンやパスタなどを嫌っていた男性がデイサービスの昼食でそれらを喜んで召し上がる場面に何度も遭遇しました。コシの強いうどんを好んでいた私の母ですが、今では柔らかければ美味しいと言うようになりました。 高齢者の嗜好の変化は、味付けだけではなく、食べやすさに影響されたりもします。今まで好きだったメニューを避けるようになったら「なぜだろう」と考えてみてあげてください。その理由がわかれば献立作成が楽になりますし、低栄養を防げるかもしれません。

食べる機能の低下

私たちは色々な筋肉や感覚を使って食べています。食べる前には香りを感じ、目で眺め脳が刺激されます。唇で熱さや硬さに触れながら取り込み、前歯で噛み切ります。舌を使って食べ物を奥歯に乗せ、噛みます。バラけた食べ物を再び奥歯に乗せるには舌と頬の筋肉を使います。唾液とバラけた食べ物をまとめて食塊にしてから咽頭に送ります。すると反射でゴックン(嚥下)されます。気管に入らないように弁(喉頭蓋)が無意識に閉じられ無事に食道に送られます。若いうちは簡単に食べていますが、実はとても複雑な運動なのです。高齢者になると身体の機能が低下し、病気やケガによって機能が損なわれることもあります。その機能に合っていない食事は困難で危険を伴います。

食べる機能が低下したなと思ったとき(例)

噛む力が弱くなったら
柔らかい食べ物
口や頬の動きが鈍くなったら
口の中でバラけにくい食べ物
嚥下が難しくなったら
滑らかな食材やトロミを付けてあげて飲み込みやすく

注意が必要な食品や料理

どの食品が良くてどれが悪いという話ではありません。若い人と同じように食べられるうちは気にせず美味しく食べて頂きたいものです。低栄養、体重低下、噛みにくい、飲み込みにくいといった症状が出てきたら注意が必要なものをお伝えします。

食品が口の中でどうなるのか、想像することの大切さ

ここで大切なのはこれらの食品を覚えることではありません。どうか想像しながら読んでいただきたいのです。食品が口の中でどんなふうに変化するのか、飲み込むときに力がいるのかいらないのか。そうすればここに書いていない食品や料理にも対応できると思います。

注意したい食品

噛むとパラパラするもの
おせんべいやビスケットを食べると口の中で欠片がパラパラしませんか?あの欠片でむせることがあります。キュウリやナッツ、固ゆで卵も同じです。
喉に張り付きやすいもの
海苔やわかめなどは喉に張り付きやすく飲み込みに注意が必要な食品です。最中やウエハースのようなお菓子も同じです。餅はさらに粘りも加わるので大きな力で飲み込まなくてはならず、嚥下の難しい方には危ない食品です。
噛んでも柔らかくならない物
こんにゃくやイカ、タコなどがこれです。噛めば小さくはなりますが、唾液と混じって柔らかくなるものではありません。さつま揚げやゴボウや竹の子も同じです。
ホクホクしたもの
焼き芋や栗饅頭、きな粉などはむせやすいです。若い方でも経験があるのではないでしょうか。
水やお茶
意外に感じる方が多いかもしれませんが、嚥下が困難な方にとってはこれが一番危険なのです。喉を通るスピードが速いので、気管に入らないように閉じる弁(喉頭蓋)が間に合わずに誤嚥しやすくなります。水を飲んでひどくむせるようになったら、飲み物にトロミを付けましょう。

注意したい料理

雑炊やお茶漬けなど
水分と固形物が混ざっていると喉を落ちるスピードが異なるので誤嚥しやすくなります。三分粥など重湯と米粒が混ざっているものも注意してください。
味噌汁
水分だけでなく具材にも注意が必要です。なめこなどツルっとしたものは汁と一緒に飲んでしまいます。汁にトロミを付けると飲み込みやすくなります。
チャーハンなど
若い方はあのパラパラを美味しく感じると思いますが、唾液が少ない高齢者にとっては口の中でいつまでも続くパラパラは難しい料理です。米粒や具材がそのまま喉に落ち、むせや誤嚥に繋がります。
おでん
注意したい食品が多く入っています。こんにゃくやさつま揚げは噛んでもパラパラ、ゆで卵はむせやすい。がんもどきのように噛むと水分がジュワっと出る食品は誤嚥しやすいです。

「だから食べてはダメ」ではなく、まずは食べる時に注意して観察してください。

いつもの料理をアレンジする

単調になりがちなおうちごはん、市販ものや買い置き食品で栄養バランスを補足しましょう。手間がかかると続きませんので、簡単なアレンジやヒントをお伝えします。むせや誤嚥の心配がある方にはひと手間かけて食べやすくしましょう。

栄養を加えたいとき

ご飯のトッピング
ご飯と漬物で済ませていませんか?ご飯のトッピングをお勧めします。シラス、納豆、具が多い市販のふりかけ(メカブや鰹節が入っている)はどうでしょうか。漬物は極少量の野菜と多い塩分だけですが、トッピングにすればタンパク質やミネラルなどが補足できます。
具だくさんのお味噌汁・コンビニの鍋焼きうどん
最近は具だくさんのお味噌汁が売られています。簡単で野菜も摂れます。ご両親と離れて暮らしている方は送って差しあげたらいかがでしょうか。コンビニで見かける鍋焼きうどん、手軽に食べられるので私は好きです。そのままだと少量のネギ、油揚げ1/2枚程度の具材ですが、卵を一つ落とせば栄養も美味しさもアップします。冷凍野菜を買い置きしておけば、さらに野菜も加えられ、豪華な鍋焼きうどんになります。
冷凍野菜・冷凍食品
冷凍のブロッコリーはタンパク質が多い野菜、チンしてマヨネーズをかけるだけで一品に、冷凍のほうれん草やカボチャなどをいつもの料理にプラスするのも手軽です。人参、オクラやとろろ芋など、最近の冷凍野菜は種類も豊富ですので試してみてください。ドリアやグラタンなど、体調が悪くても食べやすそうな冷凍食品もお勧めします。そのままでもいいですが、先に挙げたほうれん草やブロッコリーを乗せれば野菜が加わります。冷凍シューマイも便利です。スープの素と野菜を煮てシューマイを加えます。ひと鍋で主菜と野菜が入ったおかずが出来ます。
缶詰
最近は缶詰も種類が豊富ですので是非ストックしてください。焼き鳥や味付け牛肉などはそのままおかずになりますし、鮭水煮やツナ、コンビーフは料理に使えます。
その他
バナナやみかんはお勧めの果物です。包丁要らずで手でむいて食べられます(但しみかんの酸味でむせることがあるので向かない方もいらっしゃいます)。
ご飯と味噌汁だけになりがちな方は、いっそのこと「ねこまんま」にして卵を割り入れるのはどうでしょうか。水分と米粒が混ざっている雑炊は誤嚥しやすいですが、卵を入れると水分がまとまり食べやすくなりますし、良質のたんぱく質も加わります。
レトルトカレーに冷凍野菜を加えれば栄養アップ、冷凍ドリアにくずした豆腐、粉チーズと醤油少々をのせると風味が変わります。

今後「コラム」でも取り上げていきたいと思います。

むせや誤嚥が増えて食べにくくなったときの知恵

卵・牛乳・チーズ
刻み食という言葉を聞いたことがありますか?昔は介護食といえばそれでした。噛むことだけが難しい時それでもいいのですが、誤嚥しやすい時はより危険なので現在は勧められていません。飲み込みやすいようにおうちでもうひと工夫しましょう。刻んだ食材に卵をつなぎに加えて加熱すればパラパラしなくなります。同様に牛乳やチーズでもまとまります。
粘りが出てまとまる野菜
オクラやモロヘイヤは包丁で刻み叩くと粘りが出てまとまる野菜です。レンコンはそのままでは固いですが、すりおろすと食べやすくなります。山芋やジャガイモと同じように使えますので試してみてください。
豆腐・はんぺん
茹で野菜に豆腐をつぶして合わせれば即席の白和えになります。肉や魚を刻んでからはんぺんと混ぜて加熱すれば立派な主菜になります。
その他
家族と別メニューを作るのが面倒なときは調味料で済ませることも出来ます。マヨネーズはそれだけで和え衣になりますし、シチューのルーはとろみが付くので家族の煮物を小鍋に取り分けてルーを加えれば簡単です。野菜炒めをしたら一人分を小さく刻み片栗粉でとろみをつけてまとめると食べやすくなります。シリアルを牛乳で煮れば柔らかくなりますし、粗熱が取れてからプロテインを加えると高栄養食になります。缶詰と介護用レトルトを合わせるのもお勧めです。鮭水煮缶詰めのように柔らかい食材と野菜あんかけ豆腐のような介護用レトルトを合わせて温めれば一皿で栄養価の高い一品が出来上がります。

やわらかくて食べやすいソフト食

さらに食べることが難しくなると、液体も固形物も危険になり、例えればババロアのような食感のものを医師から勧められるようになります。やわらか食とかソフト食と呼ばれます。
料理をミキサーやフードプロセッサーにかければいいわけではありません。ものによっては水分が浮き出てむせやすくなり、水分が少ないとドロドロして飲みにくいものが出来てしまいます。食べやすい状態は、口の中でばらけず、飲み込みやすい柔らかさ、喉に張り付きにくいものです。また、人によって食べる能力は違いますので、噛むことが難しいと言っても舌と上あごで多少はつぶせるのか、丸飲みにしてしまうのかなど様々です。医師の説明を聞き、食べる様子を観察しながら用意しましょう。

さて、ソフト食を家庭で用意するのはとても大変、一度や二度なら誰にでもできますが、毎日毎食のことなのです。茶碗蒸しを毎食作る手間を想像してください。私にはとても無理ですし、間違いなく投げ出します。そんな時に便利なものが「ゲル化剤」というものです。料理をミキサーにかけたり、柔らかい料理を細かく刻んでおき、このゲル化剤を加えればソフト食が出来上がるというものです。つまり、家族と同じ料理を取り分けてゲル化剤を加えればいいのです。簡単そうにお伝えしましたが、これだって毎食のこととなると大変な作業です。

 

高齢者用の宅配弁当業者にはソフト食の弁当を用意していることもありますので、他所に頼ることも検討してみてはどうでしょうか。
ゲル化剤を使った料理は「コラム」でご紹介してく予定です。